顧客志向の CIAM:ゲームエイト・RIZAP テクノロジーズ・日本経済新聞社・ヨドバシカメラ

ゲームエイトさま、RIZAP テクノロジーズさま、日本経済新聞社さま、ヨドバシカメラさまに、CIAM の導入背景や課題、導入効果についてお話しいただきました。

この記事は、2025年12月11日に開催された「Authlete Customer and Partner Meetup 2025」 のパネルディスカッションの抜粋です。「顧客志向の CIAM(Customer Identity and Access Management)」をテーマに、Authlete を活用してコンシューマー向けの ID 基盤を構築されている 4社をお招きしました。事業ドメインの異なる各社さまにおける CIAM の役割と導入背景、また、CIAM の内製構築に Authlete を採用いただいた理由と導入効果、さらに、今後どのように CIAM 基盤を活用されるのかについてうかがいました。

登壇者

パネリスト

  • 株式会社ゲームエイト CTO 伊林義博氏
  • RIZAP テクノロジーズ株式会社 プロダクト開発統括1部 部長 佐藤直之氏
  • 株式会社日本経済新聞社 プラットフォーム推進室 プラットフォームグループ 部次長 浦野裕也氏
  • 株式会社ヨドバシカメラ 代表取締役 藤沢和則氏

モデレーター

  • 株式会社 Authlete ソリューションコンサルタント 森川 将聖

登壇者さまの企業・自己紹介

日本経済新聞社

株式会社日本経済新聞社 プラットフォーム推進室 プラットフォームグループ 部次長 浦野裕也氏

浦野(日本経済新聞社):日本経済新聞社の浦野と申します。日本経済新聞社は、ビジネス情報や経済情報に強みを持った報道機関で、紙の新聞はもとより、デジタルメディア、データサービス、イベント事業など様々なチャネルで情報をお届けしているメディア企業です。日本経済新聞本紙は創刊が1876年で、2026年に創刊150周年を迎えます。グループ会社を含めて、複数のメディアやデータサービスを提供しております。

私は日本経済新聞社のプラットフォーム推進室で、日経 ID のプロダクトマネージャーを担当しております。元々は全く別の業界でソフトウェアエンジニアをやっておりまして、2018年に日本経済新聞社に入社して以来、日経 ID の開発・運用を担当しております。

RIZAP テクノロジーズ

RIZAP テクノロジーズ株式会社 プロダクト開発統括1部 部長 佐藤直之氏

佐藤(RIZAP テクノロジーズ): RIZAP テクノロジーズの佐藤と申します。私が RIZAP に入社して、まる4年が経ちました。入社当時はコロナ禍の時期で、当時の RIZAP にはエンジニアが1人もおらず、代表の瀬戸が「内製化で、システムを自分たちで作る」ことを目指しており、私が1人目のエンジニアとして入社しました。

私が入社したころは、「chocoZAP(チョコザップ)」事業の立ち上げ時期でもあり、当初は外部のパートナーにシステム開発を委託していましたが、これを段階的に内製化していく方針となり、Authlete を活用しながら、ここまで成長させてきました。

我々のサービスとしては、chocoZAPというコンビニジムを提供しております。無人で、いつでも、どなたでも、簡単に、気軽に利用できるジムとして、皆さまの健康増進や、より楽しく生きていただくことに貢献するサービスです。

chocoZAP は、無人運営をコンセプトにしているため、DX を前提としたサービスになっています。お客様は、オンラインでご自身で入会し、スマートフォンのアプリを使って無人の店舗の鍵を開け、ご自身でトレーニングを行います。使い方が分からない場合もスマートフォンで確認でき、運動記録や体重管理など、すべてワンストップでオンラインで完結する点が特徴です。

chocoZAP の ID は「chocoZAP ID」ではなく、「ZAP ID」という共通の ID 基盤を使っています。RIZAP はグループ会社でいろんなサービスや事業を展開しています。ZAP ID は、chocoZAP のアプリだけではなく、いろんなサービスにログインする ID として活用されています。

株式会社ゲームエイト

株式会社ゲームエイト CTO 伊林義博氏

伊林(ゲームエイト):ゲームエイトで CTO をやっております、伊林と申します。趣味は、ゲームとプログラミングと飲み会です。是非飲み会に誘っていただけると嬉しいです。

ゲームエイトは、2014年8月に設立しまして、12年目になります。設立当初からゲームの攻略サイトをやっております。私が入ったのは 2018年ですが、それまでは創業社長も開発に携わっておりました。ちなみに、Game8のサイトが初めて配信されたのは社長のパソコンからだったという逸話があります。

我々は、ゲーム攻略メディア事業を主軸に海外展開、新規事業を推進しております。2025年 12月18日に「スマホ新法(スマホソフトウェア競争促進法)」が施行されました。この法律は、アプリ流通の競争環境を改善することを目的とした法案です。こうした動きを背景に、我々もゲームを販売したり、ゲームの中のアイテムを販売したり、ということをやっていきます。そうした中で Game8 として ID 基盤が必要となり、「Game8 ID」を作っています。

ヨドバシカメラ

株式会社ヨドバシカメラ 代表取締役 藤沢和則氏

藤沢(ヨドバシカメラ): ヨドバシカメラの藤沢と申します。当社では、ヨドバシカメラの店舗や「ヨドバシ・ドット・コム」という EC サイトを皆さんにお使いいただいています。それ以外に、金融系の事業ではクレジットカード会社の運営や、物流系ではヨドバシエクストリーム便という配送業務や物流センターなどが、大きなビジネスの主軸になっています。ヨドバシの ID を Authlete のインフラに移行する取り組みを進めています。

コンシューマーサービスにおける CIAM の役割

森川(Authlete):最初に、各社さまがとらえるコンシューマー ID、ひいては コンシューマーサービスにおける CIAM とは何なのかについて、事業ドメイン特有の考え方を交えたお話しを伺います。CIAM と一口にいっても、各社さま横並びで全く同じようなものをつくられているわけではないと思います。CIAM には企業戦略や事業特性が色濃く反映されており、単なるログイン機能やアカウント管理にとどまらないはずです。

そこでまず、日本経済新聞社さまが、顧客との接点、顧客を理解するための基盤としてCIAM をどのように活用し、日経 ID の役割として、どういったことを重視されているかについてお伺いします。

浦野(日本経済新聞社): 当社にとっての CIAM は、顧客理解のベースであり、事業成長をドライブさせるための重要な要素と捉えています。例えば日経 ID の場合、どういった業界の読者さんがどのような話題に興味を持っているのかを分析し、編集方針の参考にしたり、グループ会社を含めた他の事業に相互送客したり、さらにはマーケティングに活用したりすることにより、事業成長を助けるものとして捉えています。

森川(Authlete):RIZAP さまでは、ZAP ID という事業の中心となる ID を据えられていますが、ZAP ID はどのような役割を果たしているのでしょうか。

佐藤(RIZAP): ZAP ID の役割は大きく3つあります。 1つ目はアップセルです。chocoZAP は月額のサブスクリプションサービスになっていますが、例えば、ECサイトでプロテインやウェアを買っていただく、といったアップセルが一つ大きな期待です。

2つ目はクロスセルです。相互送客と言ってもいいかもしれません。弊社では、chocoZAP 以外にも、RIZAP というボディメイクのサービスや、ゴルフ、イングリッシュ、クックといった、さまざまなサービスを展開しています。それらのサービスを同じ ID でご利用いただきたいというのが、2つ目の役割です。

3つ目はデータ分析です。RIZAP ではデータ分析を徹底的に行い、データドリブンで意思決定をしています。全てのお客さまのデータを BigQuery に集め、お客さまがどういう行動をしているかを分析をしたうえで意思決定に活かしたり、お客さまへの適切な提案やレコメンドに活用しています。

森川(Authlete):顧客接点という観点から、コンシューマー ID の役割についてお聞きしたいと思います。ゲームエイトさまでは、ID を活用してユーザーのエンゲージメントを高めるような仕組みをどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

伊林(ゲームエイト):  ゲームエイトでは、「ゲームをもっと楽しくする」というミッションのもと、様々なサービスを展開しています。ゲームのユーザーは、まずゲームを探し、そのゲームをプレイします。そして、プレイ中になにか詰まったことがあったり、同じゲームをされている方とコミュニケーションしたりします。そして、ゲームをある程度プレイして、また別のゲームをしたいと思って最初に戻る、ということが繰り返されます。

その中で我々が非常に大事にしたいと思っているのは、そのユーザーがどのようなゲームを好きで、どのようなゲーム遍歴を持っているのかということです。そして、方法はいろいろありますが、サービスを展開し、そのユーザー一人ひとりに対して、「こういうゲームをやってきたからこういうゲームが好きですよね」という提案をしたり、ゲームのプレイ中に「今、こういうところで攻略に詰まっていませんか」といった情報を能動的に提供できる世界を実現したいと考えています。コミュニティの観点だと、「ここに一緒にプレイをしたい人がいるから一緒にどうですか」といった提案ができるような、ゲームのコミュニティ作りをしていきたいという思いがあります。

もう一つ、我々にとって大事なのは、ユーザーさんだけでなく、ゲームを作っているパブリッシャーの方々とも連携を取ることです。ユーザーがもっと楽しめるゲームを作るにはどうしたらいいのか、あるいは、現在運営中のゲームタイトルに対しても、「こういうことをユーザーは求めているから、こうしませんか」といった提案をしていくことが重要だと考えています。また、課金についても、「こういうところでユーザーが課金をしやすいから、こんなポイントをつけたらどうですか」といった提案をするためには、ユーザーの行動を理解する必要があります。これらの取り組みを行なっていくうえで、Game8 ID は重要な役割を果たす基盤になると考えています。

森川(Authlete):ヨドバシさまは、リアル店舗に加えて EC 事業も展開されており、複雑かつ大規模なチャネルをお持ちですが、コンシューマー ID、CIAM はどのような役割をになっているとお考えでしょうか。

藤沢(ヨドバシカメラ):私共では、コロナ前頃から、社内にあるリソースを外部に公開し、API を通じて利用していただくための開発を始めていました。私共には、注文、配送依頼、決済などに関わるさまざまなインフラがあります。また、その下に物流センターがあり、店舗があり、販売員がいて、倉庫で管理している商品があります。こういったものを今までは、自分たちの作ったアプリケーションや社内システムだけから利用できたわけですが、これを表に公開して、ヨドバシにある在庫を他の会社さんに売ってもらう、あるいは、ヨドバシの決済のインフラを使って実際に決済してもらう、こういった部分的な利用をしていただくものです。

例えば、同業他社が注文を受けたら、商品の発送と配送はヨドバシに依頼してもらう。または、メーカーが自社で販売しつつ、在庫管理のみヨドバシが担うということができないか、ということで当初スタートしました。その中で、API を外部に公開して使っていくとなると、ユーザーの認証と認可が課題になってきます。それが、Authlete をご紹介いただいたきっかけになります。

当初は「自社でアプリや Web サイトは作らず、すべて API で公開していこう」と社内で提案しましたが、なかなか周囲の理解を得ることはできませんでした。しかし近年、ChatGPT や Google の Gemini などの AI が登場し、LLM の世界がここ数年で急速に発展しました。そういう世界の中で、やはり正しい方向を向いていると感じています。

もちろん、アプリや Web サイトへの投資が不要になるわけではありませんが、API を通じて第三者がユーザーに代わって、業務をやってくれる、用事を片付けてくれる、という世界が現実になりつつあります。そうした環境の中で、ユーザー自身が自分の情報を守っていくために、認証認可の基盤は非常に重要になると考えています。

Authlete の提供する CIBA 機能の活用も同時に検討しており、ユーザーの情報を保護しながら、利便性も両立することが、ヨドバシの ID 基盤の大きな狙いです。ヨドバシ・ドット・コム の ID 基盤には、長年に渡って蓄積された膨大な顧客情報があります。また、ゴールドポイントカードの開始から、40年近くにわたり蓄積してきた情報は全て、データベースに入っています。こういったデータをこの AI 時代にどう活用するかが、ヨドバシの ID 基盤の大きな課題であると思っております。

CIAM 導入の背景・目的

森川(Authlete):次に、CIAM の導入に至った背景や、克服したかった課題についてお話を伺います。RIZAP さまでは、chocoZAP が ZAP ID を立ち上げるきっかけであったと以前お伺いしましたが、どういった経緯だったのか、またどのような課題を抱えておられたのかを、お話しいただけませんでしょうか。

佐藤(RIZAP): 私が入社する前までは、社内に IT のわかる人が一人もいませんでした。関連システムは、全部、外部のパートナーに委託していて、システムごとにそれぞれ、ID とパスワードがあるという状態でした。例えば、RIZAP のアプリには、ログイン用の ID とパスワードがある一方で、来店するためのカレンダーサービスには、別の ID とパスワードがあり、さらに、プロテインなどを購入する EC サイトにも、また別の ID とパスワードがありました。そのような中で私が入社して、「これは ID 基盤がないと成り立たない」と直感的に感じました。 そこで、chocoZAP を立ち上げる際には、最初から ID 基盤を前提としたサービスとして立ち上げて、それを起点に他のサービスも順次展開させていくという方針を取るべきだと考え、立ち上げたという経緯です。

森川(Authlete):CIAM の導入においては、ユーザーの利便性を高めるという動機もあるかと思いますが、ゲームエイトさまでは、そういった観点で何か目的をお持ちでしょうか。

伊林(ゲームエイト):  弊社の場合も、当時は共通 ID というのはなく、複数のサービスが存在していたため、ユーザーがそれぞれのサービスにログインをしなければならない状態でした。当時は、Game8.jp があり、海外向けの Game8.co があり、さらに他にも新規事業があったり、いくつかのサービスがありました。Game8.jp のポイントシステムもあり、現在提供している Game8 Store も立ち上げようとしているところでした。他にも色々とサービスを立ち上げようというところで、ユーザーが複数の ID を持つのは望ましくないのではないか、という問題意識がまずありました。

共通 ID を持つことによって実現できることのひとつが、ポイントの利活用です。Game8 ポイントという共通のポイントがあり、ユーザーが Game8.jp の記事を読むとポイントが貯まる、広告を見るとポイントが貯まるなど、ユーザーの行動によってポイントが貯まる仕組みになっています。このように貯めた Game8 ポイントを使って、Game8 Store でゲームやゲームのアイテムを購入してもらうという、サービスを横断して一貫した体験を提供するためには、やはりひとつの ID 基盤を持ち、各サービスを統合する必要があると考えたことが取り組みを始めたきっかけでした。

森川(Authlete):ヨドバシさまは、API 連携を前提とした世界観をお持ちですが、あらためて CIAM の導入の背景と目的についてお聞かせいただけないでしょうか。

藤沢(ヨドバシカメラ): ID の統合は大変大きなテーマです。私どもは、13桁のバーコードが入ったプラスチックのポイントカードを始めてから、40年間一貫してそれを使ってきましたが、スマートフォンが登場する前の1997年頃に、ヨドバシ・ドット・コムの ID をつくりました。そのポイントカードとネットの統合はどうすればよいのかというのが、当時の大きな課題になりました。

ネットで購入した商品を店舗で受け取れる、あるいは店頭で購入した履歴をネットで確認できるという形で、ID の統合を進めました。その後ガラケー、そして「FeliCa」を搭載した「おサイフケータイ」が登場し、FeliCa を活用した仕組みを導入しました。ヨドバシ・ドット・コムの ID を店頭で FeliCa チップに書き込み、それを店頭のリーダーで読み取ることで、ヨドバシ・ドット・コムの ID をポイントカードとして利用できるというものです。

さらにスマートフォンが登場すると、ポイントカードアプリの提供を始めました。ヨドバシ・ドット・コム の ID でログインしてアプリを利用すると、アプリ上でバーコードやワンタイムコードを表示でき、それを店頭でポイントカードとして利用できるようにしました。こうした取り組みによって、店頭とネットの体験を統合し、リアルとデジタルの統合を早い段階で実現してきました。

この基盤を今まで引き継ぎながら現状に至っています。すべて内製化してきたため、表には見えない様々な課題もあります。特に標準化の観点では、認証はできていても、認可を細かく制御する仕組みが十分ではないという問題があります。API を外部に公開するにあたっては、単にログインできればよいというわけではなく、より精微な認可制御が必要になってきました。

理想的には、ユーザーが、一つの ID ですべてのサービスを安全かつ便利に利用できることです。逆に言うと、最低限それができていないと、この先、企業としてサービス提供は難しくなると考えています。その意味では、ID 基盤のモダナイズが重要な課題になっています。加えて、不正ログイン対策としてパスキーの導入なども進めています。

もう一つ重要な点として、「自分の情報は自分で守る」という考え方の実現があります。現状では、コールセンターの担当者などがサポートのためにユーザーの注文履歴などにアクセスできる状態ですが、将来的には、ユーザーからの許可があった場合にのみ情報にアクセスできる仕組みにしたいと考えています。

こうした考え方は、人だけではなく、AI やチャットアプリ、さらには外部サービスにも適用されます。誰がどのように認可を与えるのかという課題は、今後ますます重要になると感じており、これが今、私が社内で課題としているポイントです。AI が業務を担う時代において、店頭やサポートの役割など、リアルな部分の役割の再定義が求められますが、 その基盤となるのがヨドバシ・ドット・コムの ID 基盤です。

森川(Authlete):日経 ID は電子版創刊当初から存在し、OpenID Connect の実装にも、かなり早い段階から取り組まれていたと伺っています。大手プラットフォームに依存するのではなく、あえて自社で ID を持つという決断をされた背景についてお話しいただけないでしょうか。

浦野(日本経済新聞社): 日経電子版は 2010 年に創刊しまして、その電子版を読むための ID として、日経 ID が作られました。創刊当初から OpenID Connect の OpenID Provider 実装にも比較的早い段階から取り組んでいました。私が入社した2018年当時、OpenID Connect 仕様のドラフト版に存在した機能が実装されていて、その歴史を感じることがありました。

2019年に日経 ID のリニューアル・プロジェクトを開始しましたが、当時、大手プラットフォームの ID に乗ってサービスを展開するという選択肢もあったとは思います。しかし、報道機関としては、独立性の確保が重要なポリシーであり、特定の企業に依存することには慎重になる必要がありました。プラットフォーム事業者は、当社の報道対象となる可能性もあり、一方で広告主でもあります。そういった環境の中で特定企業の ID に依存することはリスクになり得ると判断しました。現在の日本だと想像しにくいかもしれませんが、世界では特定の主体によって報道に制限や制約を加えられるケースもあります。そのような状況下であっても報道の独立性を保つためには自社で ID をコントロールすることが非常に重要です。そのため、当社では日経 ID だけではなく、課金決済やデータ分析基盤も自社で開発・運用をしています。

Authlete 選定の決め手と導入効果

森川(Authlete):続いて、Authlete を選定された決め手と導入効果について伺います。まず、日経さまが重視された独立性は、Authlete のどういった特性によって満たされるとご判断いただいたのか、あるいは実際に満たされたのかについてお聞かせいただけないでしょうか。

浦野(日本経済新聞社):Authlete は、コンポーネント・アズ・ア・サービスという形で、認証と認可の役割を明確に分離して、認可の部分に特化してサービスを提供している点が、まず大きいと感じました。2019年の日経 ID リニューアルプロジェクトの時に、他の IDaaS 製品も検討しましたが、ユーザーデータを外部に預けてしまうのは、報道独立性を担保する上で不安がありました。また日経 ID は2019年当時、すでに約 10年運用していたサービスであり、社内の課金決済やデータ分析基盤などと密接に連携していました。そのため、 ID の体系などが変わってしまうと、グループ会社を含めた多くのシステムに影響が及ぶという事情もあり、ID に関する部分は、自分たちでコントロールしたいという思いがありました。

そんな中、Authlete は OAuthとOpenID Connect のプロトコル部分に特化して機能を提供しているため、可搬性があります。 仮に将来的になんらかの制約が生じたとしても、OAuth や OpenID Connect はオープンな仕様であるため、プロトコル部分は作り直せる可能性があると思います。一方で、データを外部に握られていると、柔軟な対応が難しくなります。そのリスクが無いことも、Authlete を採用した大きな理由のひとつです。

森川(Authlete):データをお客さま側で保持できる点は、Authlete の大きな特長のひとつですので、そこをご評価いただけたことは大変嬉しく思います。ありがとうございます。続いて、RIZAP さまに、Authlete を選んだことでどのような効果が得られたかということについてお話しいただきます。

佐藤(RIZAP):3 年ほど Authlete を利用していますが、当初想定しなかった効果が非常に多いです。正直なところ、最初に Authlete と出会ったときは、どのようなサービスなのかよくわからず、「これは何だろう」という印象でした。認可だけを提供するという点についても、それがどのように役に立つのか、当初はあまりイメージできていませんでした。しかし、 知れば知るほど、非常に優れた「道具」として機能しているサービスだと感じました。一般的に、世の中のサービスは、数年使い続けると技術的負債になったり、採用したことを後悔することが少なくないと思いますが、Authlete は使えば使うほど手に馴染んでいく感覚があります。

また、副次的な効果として、Authlete は標準仕様に則った素直なサービスなので、Authlete を使うことで OpenID Connect そのものの理解が深まるという点があります。我々はこの3〜4年間、内製化を進めてきており、新しく入ってくるエンジニアが数多くいますが、OpenID Connect に不慣れなエンジニアであっても、Authlete を使ってシステムをメンテナンスしていく中で自然と知識が身についていきます。その結果、OpenID Connect に精通したエンジニアが育っていく、という好循環が生まれており、この点は Authlete を利用する非常に大きなメリットだと感じています。

森川(Authlete):ゲームエイトさまは、実際にAuthlete の API を試していただいて、導入をご検討いただきましたが、Authlete の技術面の利点についてお聞かせいただけないでしょうか。

伊林(ゲームエイト): 当時、Game8 ID 基盤を作る時にまず考えたのは、IDaaS を利用することでしたが、当社の利用規模ではコスト面の検討が必要でした。そのため、自然と自分たちで実装をするという選択肢になりました。しかし、本音を言うと、自分たちで OpenID Connect の仕様を完全に実装してユーザーに提供するというのは、とても怖いと感じていました。なぜかというと、弊社のサービスだと月間で最大4,000万 ユニークユーザーが訪れており、日々多くのアクセスがある中で、不正ログインなどへの対策も重要になります。OpenID Connect を仕様通りに実装し、安全を担保してくことが我々にできるのか、という不安がありました。

しかし、Authlete の API 仕様を見ながら実装を進めていく中で、「これはとても勉強になる、安心して安全なものを開発できる」と感じました。このフローに従って実装をすれば良いというレールを敷いてくれるので、とても安心して実装を進めることができました。 また、社内に対しても「これは安全な基盤です」と説明することができますし、 外部から問い合わせが来た場合でも、こちらの実装に問題はないことが自信をもって説明できます。そうした確信を持つことができたので、Authlete の導入を決めました。

森川(Authlete):ヨドバシさまにも、Authlete 選定の決め手についてお話しいただけないでしょうか。

藤沢(ヨドバシカメラ):認証と認可が分離されている点は、非常にわかりやすいポイントでした。そのうえで、標準仕様に準拠しており、かつ仕様の変化に追従しているという点が、シンプルで理解しやすかったです。今後は外部への API 公開が主流となるため、外部から見ても安心できる仕組みであることを説明できる必要があります。このあたりが最も重要な評価ポイントです。これからも、新たな標準仕様が出た際には素早く対応していただけることを Authlete に期待しています。

今後の展望

森川(Authlete):ありがとうございます。標準への準拠や、新しい仕様への迅速な追随は Authlete の強みですので、そこを評価していただけたことを非常に嬉しく思います。最後に今後の展望ということで、各社さまに CIAM を活用した今後の取り組みや注力される戦略についてお伺いします。ヨドバシさま、いかがでしょうか。

藤沢(ヨドバシカメラ):今後は、AI やチャットサービスをはじめ、さまざまな技術が出てくると思いますし、他社システムからのアクセスや MCP のような新しい仕組みにも取り組んでいく必要があります。API を単に公開するだけでは、それをどのように活用するのかを AI が理解するのは難しいので、MCP を介してどのように提供していくかが、今の課題です。その際の認証・認可をどうしていくべきかについては、いくつかアイデアはありますが、Authlete さんからアドバイスをいただきながら、実装を進めていきたいと考えています。

将来的にどのようなアプリケーションが残るのかという点については、チャットインターフェースが主流になっていくと思います。例えばお客さんが「いつも購入しているビールを自宅に届けてほしい」と一言伝えるだけで、「承知いたしました」と届く。そういう世界観は実現されると思います。

その際、ユーザー本人が直接注文する場合は問題ありませんが、他社サービスと連携する場合や、そのようなチャットサービスを他社に提供する場合には、より複雑な認可の仕組みが必要になります。例えば、取引先企業から、「この商品をお客様に届けるから連絡してほしい」と依頼され、それに応じて我々が対応するケースでは、お客さまの履歴情報などに、他社サービスが関与することになります。このような状況において、どのような認可プロセスを行なっていくかが大きな課題になると考えています。

この仕組みには、従業員、取引先、配送担当、物流担当、店頭スタッフ、コールセンター、サポートセンターなどさまざまな関係者が関わってきます。この AI の時代に、どのように会社の仕組みを適合させていくかが、今後の課題です。その中で最も重要なのが認可であると考えています。

森川(Authlete):Authlete はコンポーネント型のサービスですので、組み込みやすく、変化への追随も柔軟に行いやすい点が強みです。ありがとうございます。続いて RIZAP さまにお伺いしたいのですが、ZAP ID によるサービス連携についてお話いただきましたが、今後のサービス連携や周辺サービス、ID  や API などの連携についてはいかがでしょうか。

佐藤(RIZAP): まだ実現できていないものの、取り組みたいことは非常に沢山あります。例えばサポート領域については、元々、chocoZAP は電話サポートのみで開始し、その後メールサポート、現在は Web フォームによるサポートを展開していますが、現状では、ログイン連携ができていません。今後は、ここを ZAP ID と連携させることで、よりユーザーに適したスムーズなサポートを提供していきたいと考えています。また、 chocoZAP の店頭にはタブレットや IoT 機器がありますが、現時点ではこれらもログインや認可の仕組みが十分に整っていません。例えば、店舗で簡単に運動を記録したり、なにかを購入したりといった体験を提供するなど ID を中心としたサービス連携の可能性はまだ沢山あると考えています。

森川(Authlete):ゲームエイトさまでは、おそらくGame8 IDを中心に据えて今後も展開されていくと思いますが、こちらについての今後の展望についてお話いただけないでしょうか。

伊林(ゲームエイト): Game8 IDについては、まず ID 基盤として、よりユーザーの方に安心・安全に使っていただけるよう、認証の強度を高めていきたいと考えています。また、ゲームエイトとしては、現在、Game8.jp と Game8 Store が分かれていますが、攻略記事の閲覧からゲーム関連商品の購入まで、よりシームレスな体験を提供していきたいと考えています。さらに、将来的にはゲームパブリッシャーとの連携も視野に入れながら、ゲームエイトとしても、パブリッシャー側としても、ユーザーのインサイトをより深く得られるような取り組みができれば良いと考えております。

森川(Authlete):日経さまでは、パスキー対応など先進的な機能にも取り組まれていますが、今後もこうした取り組みを継続される予定でしょうか。

浦野(日本経済新聞社): 近年、日経 ID は、旧来のシステムから新しいシステムへ段階的にマイグレーションしていくプロジェクトに数年間取り組んできましたが、昨年ようやく一区切りがつきました。現在は、事業貢献につながる施策を積極的に展開していくフェーズに入ったと考えています。今年の春先に発表したパスキー認証のように、トレンドを抑えた機能開発を今後も進めていきたいと思っています。一方で、日経 ID は 15年以上運用しているサービスであるため、課題もいくつか顕在化しています。例えば、属性情報が古くなっていたり、長期間利用されていないアカウントが数多く存在しているといった点です。 こういった課題については、すでに一部取り組みを進めていますが、今後どのように対応していくかは重要な課題として認識しています。

森川(Authlete):ありがとうございます。本日は皆さまありがとうございました。

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